長時間の労働により疲労が蓄積されれば、過労死することもあります。それ以外にもうつ病などの病気や自殺を引き起こす原因にもなり、マイナスの影響しかありません。人材を「人財」と表現する企業もあるように、社員を会社の財産と考えている会社もあります。では社員の体と心を守るために、会社としてできることは何があるのでしょうか。
2021年に見直された「過労死ライン」とは
2021年、20年ぶりに過労死ラインが見直されました。過労死ラインとは労災認定の基準です。過労死とは「業務における過重な不可による脳・心臓疾患や業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする死亡やこれらの疾患」と、厚生労働省は定義しています。「死」という言葉がついていますが、死亡に至らなくても業務における過重な不可・強い心理的負荷による脳血管疾患・心臓疾患・精神障害も過労死に該当します。
過労死ラインの認定基準
過労死ラインの認定基準は以下のとおりです。
①発症前2~6か月間に時間外労働が1か月平均で80時間を超える水準(近しい場合も含む)
②発症1か月前の時間外労働が100時間を超える場合
③一定の労働時間以外の負荷要因
※出展:厚生労働省「脳・心臓疾患の労災認定基準改正に関する4つのポイント」
改正前は「発症1か月におおむね100時間または発症2か月間ないし6か月間にわたって、1か月あたり80時間を超える時間外労働が認められる場合について業務と発症との関係が強いと評価できること」とありましたが、改正後は先ほどの時間に至らなかった場合でも、労働時間以外の負荷要因を考慮したうえで評価できることが追加されました。つまり、改正後は労働時間だけでなく、労働時間以外の負荷要因も総合評価されます。
労働時間以外の負荷要因
改正後において重要なポイントとなる「労働時間以外の負荷要因」には、以下のものがあります。
①勤務時間の不規則性
②事業場以外における移動を伴う業務
③心理的負荷を伴う業務
④身体的負荷を伴う業務
作業環境新たに追加された項目は③と④のほか、①は「休日のない連続勤務」「勤務間インターバルが短い勤務」、②は「そのほか事業外における移動を伴う業務」です。勤務間インターバルが短い勤務とは、就業から次の勤務の始業までが短い勤務を指します。
長時間労働が常態化しがちな理由
「日本人は時間にルーズだ」と外国人いわれるほど、日本では終業時間があいまいな会社や、定時を超えることが普通となっている会社が多くあります。就業時間内に仕事をすべて片付けて帰るのが理想ですが、長時間労働が常態化してしまうのはなぜでしょうか。
人材不足
業務量に対して必要な従業員数が足りておらず、人材不足となっているケースです。人がいない分1人当たりにかかる負担が大きくなり、1日の業務量が膨大になってしまいます。そうすると残業することが当たり前となってしまい、定時に帰ることはごくまれです。従業員がたくさんいたころの仕事量で業務をしている会社もあり、負担が大きいから退職するといった悪循環が生まれることもあります。
業務が効率化されていない
最近ではペーパーレス化も進んできましたが、業務の効率化ができていない会社はいくつもあります。たとえば無駄な会議や勤怠管理、紙の資料などです。目的のない会議はやめ、勤怠管理と資料はクラウドシステムを使えばより便利になります。しかし、導入コストや「今までこれでやっているから」と根拠のない理由により、業務が滞っている会社がいることも事実です。新しいシステムに対して不安を覚えるのは仕方ありませんが、業務効率を上げるために挑戦することも必要です。
残業が美徳とされるケース
長時間労働が評価される企業風土がある場合、残業は美徳として評価されます。なぜこのように評価されるのかというと、時間の長さを努力としてとらえているからです。人は褒められるとモチベーションが向上し、よい結果につなげられることもあります。しかし、長時間労働による評価は別です。評価を得ようとして逆に業務効率が悪くなり、身体に悪い影響が出てしまいます。
長時間労働をさせないために会社ができること
「長時間労働が常態化していてなかなか抜け出せない」とお困りの方のために、会社としてできることを紹介します。これらを参考にして、過労死を未然に防ぎましょう。
勤務間インターバル制度を導入する
勤務間インターバル制度とは、終業から次の始業までの間、一定時間以上の休息時間を確保する取り組みです。深夜まで残業して翌日定時から出勤するとかなりつらいため、時期によって残業が集中するのであれば、こうした制度を導入するとよいでしょう。
ストレスチェックをする
ストレスチェックとは、面接指導などによって心理的な負担の程度を把握する検査のことです。導入の際は厚生省の「ストレスチェック制度導入マニュアル」を参考にしてください。チェックシートもダウンロードできるため、それを用いてチェックするとよいでしょう。
まとめ
過労死ラインの認定基準や、過労死を防ぐために会社ができることを解説しました。頑張って働くことはよいことですが、頑張りすぎや頑張らせすぎは身体に悪影響を及ぼします。従業員を大切にするために、勤務間インターバル制度の導入やストレスチェックを実施してみましょう。このほかにも、産業医と連携したり啓発活動を行ったりするのも1つの手段です。職場の雰囲気や残業の傾向に合わせて、適切な方法を導入しましょう。
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引用元:https://lookjob.jp/
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