残業時間を正確に把握できていないと起こるリスクとは？適切な勤怠管理の方法も解説

自社の残業時間を正確に把握している企業はどれくらいいるでしょうか？とくにアナログな勤怠管理を続けている企業は、従業員の労働管理が不十分です。そこで今回は、残業時間の管理を怠った場合のリスクと、適切な勤怠管理方法について紹介します。ぜひ参考にしてください。

残業時間を把握することはリスクの軽減につながる

働き方改革によって、これまでと違った働き方を導入している企業が増えています。とくにコロナ禍が、その状況を加速させました。

しかし一方で、人手不足やアナログな勤怠管理を続けている企業はまだまだ少なくありません。残業時間を把握できていないと、一体どんなリスクをはらんでいるのでしょうか？

過重労働

残業時間をきちんと管理できていないと、知らず知らずのうちに過重労働になる恐れがあります。過重労働の怖いところは、心身の健康に悪影響を及ぼしてしまうことです。場合によっては、うつ病や過労死を引き起こす危険性もあるでしょう。

実際、長時間労働によって労災認定された事例は少なくありません。企業イメージや信用にも影響を与えてしまいかねないため、残業時間を正確に把握することは非常に大切です。

法令違反

日本では、すべての労働者に「労働基準法」が設けられています。この法律があることで賃金の支払い方法や労働時間、年次有給休暇などが決まっているため、万が一時間外労働・休日労働・深夜労働があった場合、それに応じた割増賃金を支払わなければいけません。

残業時間を把握していないということは、36協定で定めた上限を上回っている可能性があります。毎年行われる厚生労働省の調査でも、時間外労働による是正勧告を受けている企業が多く報告されているため、正確な勤怠管理が必要不可欠です。

残業代未払い

残業代未払いが常態化すると、労働基準監督署への通報や損害賠償請求につながります。とくに残業時間が曖昧な場合、こういったリスクが発生しやすく、経営に大きな打撃を与えかねません。

「従業員が少ないから」という理由で勤怠管理を怠っている企業も存在すると思いますが、リスクを回避するには適切な時間管理が必要です。

従業員のモチベーション低下

残業時間がきちんと管理されていると、従業員のモチベーションアップにつながります。また、管理体制が整っている企業は、早期離職も少なくありません。

働き方改革の意識が高まっている時代だからこそ、適切な勤怠管理は企業の信頼と定着率を向上させ、従業員にとってもやりがいと働きやすさを感じやすいでしょう。

残業時間を把握できていない企業の共通課題

残業時間をきちんと把握できていない企業は、共通となるいくつかの課題が存在します。とくに、業務に関する知識やノウハウが担当者のみに集中している場合は注意が必要です。

ここでは、原因となる代表的な課題を紹介します。

打刻ミス・申請漏れ

打刻ミスや申請漏れは、とくに紙のタイムカードや手動システムを利用している場合に起こりやすいといわれています。

もちろん、手動システムだからといって、必ずしもミスにつながるわけではありません。なかには、二重打刻やタイムカードレコーダーの不具合、設置場所がわかりづらいなどが原因で発生するケースもあります。

いずれにしても、打刻を正しく記録できていないと勤務時間に大きく影響するため、抜けや修正忘れといったトラブルになりやすいでしょう。こういったヒューマンエラーを防ぐにも、勤怠管理システムを導入し、打刻精度を高める必要があります。

勤怠データの集計に時間がかかる

ひとつのフォーマットや部門で管理している場合、集計がバラバラになる可能性は軽減します。しかし、複数のフォーマットや部門ごとにわけて集計している場合、どうしても全体の集計に手間がかかり、負担になりやすいでしょう。

勤怠データの集計を短縮させるためには、全社共通のデータ管理体制を整える必要があります。わかりやすいのが「勤怠管理のペーパーレス化」です。

ペーパーレス化することで集計や確認の手間を省くだけでなく、コスト削減や従業員の利便性向上にもつながります。また、データ改ざんの防止にもなるため、労働管理の透明性も高まります。

所定外労働の管理が不十分

各現場で残業が発生しても、上司や人事がきちんと把握していなければ従業員の労働時間を正確に把握するのは困難です。要するに、所定外労働の管理が不十分だと、過重労働や残業代未払いなどが発生しやすくなります。

店舗の場合も同様です。責任者の裁量で残業が決定しても、本部にきちんと届いていないと労働管理が機能せずトラブルになりやすいでしょう。

一貫した労務ルールを決め、運用することが大切です。

集計作業の属人化

一部の担当者に集計作業を任せてしまうと、人的ミスや業務停滞が発生します。いわゆる「業務の属人化」によるリスクです。

属人化してしまうと、担当者が不在の場合、業務を遂行することができません。それどころか、異動後の引き継ぎでトラブルが起こる可能性もあります。

残業時間を正確に把握し、業務効率化を図るためには、属人化にならないことが重要です。また、勤怠管理システムを導入するなど、安定した管理体制を築く必要があるでしょう。・

正確に残業時間を管理するためには

正しく残業時間を管理するためには「勤怠管理システム」が必要不可欠です。もちろん、労務リスクの軽減や従業員の健康・生産性を高めるための管理体制も重要になります。

ここでは、勤怠管理システムと残業状況の可視化・分析について解説します。

クラウド型の勤怠管理システムを導入する

勤怠管理システムとは、従業員の出退勤の記録や残業時間などを管理するシステムです。さまざまな種類・機能があるため、自社の働き方や規模に応じたサービスを選ぶ必要があります。

たとえばクラウド型を導入した場合、日々の打刻状況や残業時間を随時チェックでき、スピーディな対応が見込めます。また、見える化することで過重労働防止にもつながるでしょう。

ほかにも、以下のようなメリットがあります。

1つ目は、法律違反リスクの軽減です。打刻制度が高まるため、残業時間を正確に把握できます。

2つ目は、担当者の業務効率化です。集計や確認を手作業で行う必要がないので、時間と労力を削減し、業務の効率化につながります。アラート機能により、未打刻や残業超過も防げるでしょう。

3つ目は、勤怠データが可視化されることで、従業員の働き方を見直せます。残業が集中している時間帯や慢性的な長時間労働に気づきやすいのもメリットです。

4つ目は、データに基づいたマネジメントの実現です。正しい情報を基に判断できるので、部署ごとに残業時間を比較したり、改善点を見つけやすかったりと企業にとって有利になります。

残業状況を可視化・分析

勤怠管理システムを活用することで、従業員の残業状況をリアルタイムで可視化します。さらに、可視化したデータ・課題を分析し、過重労働の防止や生産性の向上にもつながります。

このほかにも有給休暇の取得率を把握したり、サービス残業が発生している部署を特定したり、さまざまな分析が可能です。作業工数を記録できるシステムの場合、内訳を割り出すこともできるでしょう。

アラート機能を活用すれば、出退勤の打刻と勤務表に乖離があった場合、アラートでお知らせしてくれます。紙のタイムカードでは気づきにくい細かいミスも勤怠管理システムなら正確に記録するため、打刻した時間を不正に修正することも不可能でしょう。

まとめ

ビジネスにおいて、リスクを完全に回避するのは困難です。しかし残業時間の場合、正確に把握できていないと過重労働や残業代未払いなどが起こりやすく、従業員の早期離職や企業のイメージダウンにつながりかねません。働き方改革が進むにつれて、ワークバランスは非常に重要なテーマでしょう。今回は、残業時間の管理が不十分だった場合に起こるリスクについて紹介しました。適切な勤怠管理を行い、健全な労働環境を手に入れましょう。